コラム 生活クラブがつくった「食品安全条例」

直接請求から15年
みんなの力でつくった「食品安全条例」!

 80年代後半、日本の食をめぐる状況は大変不安な時代でした。86年に起こったチェルノブイリ原子力発電事故には、多くの組合員が強い衝撃を受けました。添加物や農薬を使わない安心な食を求めていたのに、放射能は容赦なくこれらを汚染し、何を食べたらいいのか、子どもを持つ親は途方にくれていました。おりしも、日本の食料政策が輸入重視に転換する時代、輸入食品は急増し、放射能汚染に加え、収穫後の農薬散布や日本では禁止されている薬剤の使用など、食の不安は大きな社会問題になろうとしていました。

 そんな中、生活クラブが生活者ネットワークや地域の市民団体・労働組合・他の生協とともに行なったのが、「食品安全条例制定」を求める直接請求運動です。最初は思うように声かけもできなかった組合員が、自ら条例の市民案をつくり受任者となり、自分たちの不安やこうしたい思いをおおぜいに語る活動が各地で展開されました。結果、組合員数の10倍以上の55万筆もの署名を集め、東京都知事に条例の制定を直接請求することができました。これを受け、当時、代理人として東京都議会で議員活動を行なっていた池田敦子さんは、食の安全について党派を超えて議会でアピールし、多くの共感を得ました。

 55万人の署名を提出惜しくも直接請求そのものは否決されましたが、それが契機となり、予算の増額、食品安全委員会の設置など、東京都の食品安全行政は強化され、国の施策を上回るほどに。おおぜいの組合員の力が行政を大きく動かす運動となりました。

  その後、食の不安は、BSE・食品偽装表示・鳥インフルエンザなどますます広範なものになり、2004年、国でもようやく食品安全基本法を制定、食品安全委員会を設置するなど食品安全行政の強化が図られました。東京都では、石原都知事(当時)が生活者ネットワークの質問に答える形で「食品安全条例」を制定する姿勢を示し、3月30日、「食品安全条例」は全会一致で可決され、東京都にはじめて食の安全性を確保するための条例が制定されたのです。

 国に先駆けての加工食品の原産地表示義務や遺伝子組み換え食品規制のガイドライン制定など、この間の東京都の先進性は、まさにこの条例に依拠したもの。20年以上にわたる一人ひとりの組合員の活動の成果といえます。当時の機関紙「ジョイ・エス」では、このときのよろこびを下記のように伝えています。


条例でうたう「食の安全」、歴史的第1歩がスタート!
東京都に待望の食品安全条例制定!(生活クラブ東京機関紙ジョイ・エス6月号より)


『都民の食品の安全を確保するために~東京都食品安全条例を制定』 ―これは平成16年(2004年)4月1日付「広報東京都第700号」の1面の大見出しです。55万筆の有権者の署名をもって東京都に「食品安全条例」制定を求めた、89年9月の直接請求から15年を経て、待望の食品安全条例が制定されました。
この間、食をめぐる問題は食品添加物、残留農薬から環境ホルモン様物質、遺伝子組み換えへと広がってきました。また、アメリカでのBSEの発症、国内外での鳥インフルエンザ感染地域の拡大など「食の安全」が消費者の手から遠のいていることはみなさんもご承知の通りです

15年目の動きにすばやく対応

こうした事態に対し、国は食品安全基本法の制定、リスク評価(食品健康影響評価)を行なう食品安全委員会の発足などの対策を講じてきました。そして東京都も、生活者ネットワークの議会質問を受け、昨年8月からようやく食品安全条例制定に向けて動き出したのです。
長年の懸案だった条例制定の動きに、私たちも「食品安全条例を市民がつくる会」を立ち上げ、消費者の権利や策定過程への市民参加を求める意見の提出など積極的にはたらきかけてきました。

 成果と課題を見据えていこう

残念ながら条例案には、私たちが強く求めた「消費者の権利」は盛り込まれず、本会議場での代表質問、厚生委員会での審議でも、市民の申し出制度、遺伝子組み換え作物の栽培規制、リスクコミュニケーション(リスク評価に対し消費者も交え幅広い意見交換を行なうこと)など未然防止策について前向きな答弁はされませんでした。
しかし、15年の月日を経て、東京都に食品安全条例が制定されたことは、これまでの弛(たゆ)まぬはたらきかけの成果です。このことは、消費者の権利の確立と、食品安全行政への市民参加をすすめる大きな一歩となるはずです。


食品安全条例制定への歩み

  市民の取り組み   東京都及び市区町村 国その他社会の動き
1985年     ジエチレングリコール入りワイン事件
1986年     チェルノブイリ原発事故
1987年12月 食品安全条例制定を求める11万人の請願署名     
1988年     牛肉、オレンジ輸入自由化
1989年3月 食品安全条例直接請求署名活動スタート!
55万筆の署名で東京都知事に本請求
   
1989年9月   都議会で条例案審議
(1回目継続審議)
 
1989年10月   東京都に設置
「食品等安全行政連絡会議」 
 
1989年11月 都議会で請求代表神山氏意見陳述   東京都の消費対策審議会に
「食品等安全対策部会設置」  
 
1989年12月   都議会で条例案継続審議
(2回目)
 
1990年1月   知事90年予算原案発表、
食品安全関係予算5億1900万
を11億4200万に倍増 
食品監視指導班の設置
カビ剤イマザリルなどポスト
ハーベスト食品汚染が問題化、
食品のハーモニゼーション
1990年3月   東京都消費生活条例改正
を答弁
3/30 条例案都議会で否決 
 
1990年12月   「東京都における食品安全確
保対策にかかる基本指針」策定
 
1991年    「食品安全条例を作る会」が
「食品安全ネットワーク」に発展
「東京都における輸入食品確保対策」策定、
有機農業モデル生産団地事業の開始  
 
1992年   国際的な基準緩和の波におされ
設定された新基準の取り消しを求める
「残留農薬基準取り消し裁判」開始
  34農薬について
残留基準が緩和される
1993年   東京都に行政・事業者・消費者
による「食品保健懇話会」が設置
加工食品に期限付き表示
1994年  市民と行政の協議会で残留農薬基準
認証制度、有機農業を協議
生活者ネットワークが輸入米の小売
段階での検査実施を答弁で引き出す
 
1995年    生活者ネットワークの質問で東京都が
ベビーフード残留農薬検査を約束
食品衛生法の一部改正
1996年    遺伝子組み換え食品の表示
を求める請願運動
都議会で生活者ネットワーク提案による
「遺伝子組み換え食品に関する意見書」採択、全国に波及
遺伝子組み換え食品7品目の安全性検査
1997年 市民と行政の協議会で「遺伝子組み換
え食品・慢性毒性検査の必要性」を協議 
有機農産物流通指針にもとづく
流通事業の開始(認証制度の実現)
所沢ホーレンソウでダイオキシン問題
1998年10月    市民と行政の協議会で「食品安全
確保の基本指針改定について」を協議
都議会で生活者ネットワークの質問に、
「環境ホルモン、生活実態に即した検査の実施」を答弁。
業界内にポリカーボネート・ガイドライン制定
 
1998年12月   

生活クラブ市民政策委員会「基本指針
改定への意見」を都に提出
*都民の安全な食を営む権利を明記する
*都民参加と事業者、都の先導的
役割を明記すること
*未然防止の観点を明記すること
*パートナーシップ、自主管理マニュアル、
流通指針の拡大、食習慣にあった基準・
乳幼児への配慮、
ハーモニゼーションを入れない、
学校給食の安全確保  

   
1999年      「東京都における食品安全確保対策にかかる基本指針」改訂 、都議会で「遺伝子組み換え独自表示」を答弁    
2000年    日生協「食品衛生法改正を求める国会請願署名」実施    雪印乳業食中毒事件、缶詰などへのトカゲ等の異物混入事件多発
2001年      知事、生活者ネットワークの質問に「子ども基準の必要性」を答弁 国内初のBSE発生
2002年 生活クラブ、ストップ!GMイネ自治体請願実施、愛知県にGMイネの開発を断念させる
東京都生協連 食品安全条例制定に向けた請願署名運動
生活者ネットワーク、知事から「基本指針の条例への格上げ」に前向きな答弁引き出す
東京都、重要施策で食品安全条例制定を提案
東京都、12月議会で「条例、早急に」「情報評価委員会、自主管理認証制度」等について答弁
 国で、遺伝子組み換え食品の表示制度、有機農業認証制度が発足
国のBSE問題検討委員会や関係閣僚会議で「食品安全基本法」が論議される
中国産ホーレンソウから基準以上の残留農薬検出
2003年   東京都、2月議会で生活者ネットワークの質問に「基本指針の継承」等答弁   
     食品安全条例制定に向けた請願が、東京都議会全会派一致で採択!
 
 
2003年    岩手県、北海道のGMイネ屋外実験を中止に追い込む   国に食品安全基本法制定され、食品安全委員会設置される
2004年 GM小麦開発に反対する団体署名
→モンサント社開発断念
首都圏GM屋外実験説明会
→実験延期、中止
生活者ネット、食品安全条例都知事案に対して修正案 アメリカでBSE発症、米国産牛肉の輸入停止
鳥インフルエンザ感染、鶏肉輸入停止
    3月都議会で食品安全条例制定
 
 

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