「ゲノム編集技術の利用により得られたあらゆる生物を規制の対象としてください」パブリックコメントを提出
近年、ゲノム編集技術の様々な利用がすすんでいます。環境省は「中央環境審議会自然環境部会遺伝子組換え等専門委員会」(以下「専門委員会」)の下に「カルタヘナ法におけるゲノム編集技術等検討会」を設置し、ゲノム編集技術により得られた生物のうち、どのようなものがカルタヘナ法の対象となるのか、また、カルタヘナ法の対象外とされた生物の取扱方針をどうするのかについて検討しました。カルタヘナ法は、遺伝子組換え作物・動物の輸出入によって生物多様性が損なわれることを防ぐための国際条約「カルタヘナ議定書」を国内で実施するための法律です。
専門委員会で報告案「ゲノム編集技術の利用により得られた生物のカルタヘナ法上の整理及び取扱方針について(案)」が取りまとめられ、9月20日からパブリックコメントが募集されています。
北東京生活クラブ生協は10月26日、ゲノム編集技術の利用により得られたあらゆる生物を規制の対象とすることを求め、意見を提出しました。
北東京生活クラブがパブリックコメントとして提出した意見は次の通りです。
[意見1]
●該当箇所:1 カルタヘナ法の規制対象範囲について (3)法律上の整理
●意見内容:カルタヘナ議定書の目的にもとづき、予防的な取り組みを行なってください。
●理由:
カルタヘナ法の目的は、国際的に協力して生物の多様性の確保を図るため、カルタヘナ議定書の的確かつ円滑な実施を確保することです。また、カルタヘナ議定書の目的には、リオ宣言の原則15に規定する予防的な取組方法に従うことが明記されています。ゲノム編集技術の利用により得られた生物のカルタヘナ法上の整理にあたっては、カルタヘナ法の目的に照らして、予防的な取り組みを行なってください。
[意見2]
●該当箇所:1 カルタヘナ法の規制対象範囲について (3)法律上の整理
●意見内容:ゲノム編集技術の利用により得られたあらゆる生物をカルタヘナ法における規制の対象としてください。
●理由:
「ゲノム編集技術の利用により得られた生物のカルタヘナ法上の整理及び取扱方針について(案)」では、カルタヘナ法における「遺伝組換え生物等」の定義にもとづいて規制対象範囲を整理し、得られた生物に細胞外で加工した核酸が含まれない場合は「遺伝子組換え生物等」に該当しないとしています。しかし、カルタヘナ法は、ゲノム編集という新しい技術が誕生する前に作られたもので、法律自体がゲノム編集技術に対応できていません。世界的にも現行の遺伝子組換え生物に対する規制に該当するのかどうか、議論がされている段階です。
ゲノム編集によって得られた生物は、自然界での突然変異と区別できないと言われますが、ゲノム編集は、自然界ではありえないスピードで変異を起こします。遺伝子を人為的に操作すること自体に疑問がぬぐえません。
また、ゲノム編集技術は、標的以外の遺伝子におよぶオフターゲット効果や遺伝子の変化がその生物の特性に意図しない変化をもたらす可能性があり、食品として流通した場合、異常タンパク質によるアレルギーなどの問題を起こすことも考えられます。
改変された生物が自然界に出てしまえば、遺伝子の回収は不可能です。特別な機能を持つ生物による遺伝子汚染によって、それまでの環境が変わり生物の多様性が脅かされる可能性があります。
意見1に書いたカルタヘナ法の目的にある生物の多様性の確保とカルタヘナ議定書の定める予防的措置に則り、ゲノム編集技術全般をカルタヘナ法の規制対象範囲としてください。
[意見3]
●該当箇所:2 ゲノム編集技術の利用により得られた生物のうち、カルタヘナ法の対象外とされた生物の取扱いについて
●意見内容:「主務官庁への情報提供」という使用者の自主性に任せる仕組みではなく、情報公開を義務づけ、市民が情報にアクセスできるように規制を行なってください。
●理由
ゲノム編集技術に登録・規制の枠組みがないまま、実験研究がすすみ食品が開発されていけば、生物多様性の確保が脅かされるだけでなく、事故が発生した後では追跡ができず、取り返しのつかない問題が生じます。
「ゲノム編集技術の利用により得られた生物のカルタヘナ法上の整理及び取扱方針について(案)」では、カルタヘナ法の対象外とされた生物の使用について、開放系での使用の場合は、「主務官庁への情報提供」という使用者の自主性に任せる仕組みを提案しています。また、閉鎖系での使用(拡散防止措置をとった使用)の場合は、情報提供の対象からも除外しています。
遺伝子組換え生物の閉鎖系での使用についてはこれまで、神戸大学が遺伝子組換え大腸菌をそのまま下水に流すなど、適切な拡散防止措置が取られずに遺伝子組換え生物が環境に放出されてしまった事故が、しばしば報告されています。情報提供を求めないままゲノム編集技術の実験が行なわれれば、誰も気づかないうちに環境に放出されてしまう危険があります。
研究段階からの情報公開も含めたゲノム編集技術に登録・規制の枠組みがなければ、トレーサビリティも確保できません。第一種使用(開放系での使用)についても、第二種使用(閉鎖系での使用)についても、法律にもとづいて情報公開を義務づけ、市民が情報にアクセスできるように規制を行なってください。
以上
【2018年10月29日掲載】