機関紙『街かど』2023年4月号
日本国内の食料基盤は危機的な状況
感染症や国際紛争の影響、物流の停滞、飼料価格やエネルギー価格の暴騰、また国の政策に関連し円安や高齢化も進み、生産者の後継者不足や気候危機など何十年も前から問題視されていた事への対策は進んでいません。私たちの食料生産基盤は危機的な状況にあります。だからこそ今、予約登録することの意義を理解して利用する人を増やすことが必要です。
ビジョンフードとは、生活クラブの米、牛乳、鶏卵、肉類、農作物の国内自給力の向上や生態系の維持など、生産から消費・廃棄に至るまで大きなビジョン(展望)を持って取り組む消費材のことです。共同購入を通して生産者との連携を強め、私たちのビジョンを形にしていくことで、未来の食の安全の実現をめざしています。
「予約する」ということ
予約して食べるという私たち組合員の行動は、「私たちはこれだけ食べます」という生産者との約束です。
年間で食べる量を約束することで、生産者はどれだけ作ればいいのかがわかり生産に集中することができ、私たちは自分たちの望む方法でつくられた消費材を利用することができます。
農産物や畜産物は一朝一夕には作ることはできませんし、その他の消費材もすぐに増産というわけにはいきません。不安な情勢や異常気象の中、手間と時間をかけて生活クラブの基準に沿って作られた消費材を、たくさんの人が予約して安定した利用を続けることで、私たちの消費材を守り、未来へ食をつなぐことができるのです。
米 「米は国内で唯一自給できる穀物」
食の安全保障の要である「米」の取り組みについて、消費者が求めるおいしさや安全性、生産者が求める継続性のある生産の両方を実現するため、品種から栽培方法、価格や契約数量まで組合員と生産者が話し合って決めています。リスク分散の視点で4つの産地があり、私たち北東京生活クラブでは那須山麓米の利用に特に力を入れています。那須山麓米の生産者「どではら会」とは直接の交流ができない間もオンラインを活用して交流を続け、昨年は予約登録者の代表と現地に雑草取りに行くことができ、顔の見える関係を育んでいます。産地では、とにかく丁寧に栽培する姿勢を貫き、一般的な栽培方法の半分以下の化学農薬と化学肥料での栽培を実現しています。
鶏卵 生産再開を見据え継続した予約登録が重要に!
昨年12月と1月、生活クラブのたまごを育てている農場2か所で高病原性鳥インフルエンザが発生しました。10個から6個に個数を減らし、なるべく多くの予約者に行き渡るよう供給し、デポーでは1人1パックに限定して販売しています。現時点(2023年2月現在)では、通常の注文と新規予約登録の受付は休止し、まずは既存の予約者への安定した供給をめざしています。今後は、契約する農場を増やすなどリスク分散をはかっていきます。
牛乳 私たちの牛乳工場は経営の危機にあります
近年、国策として生乳の増産に力を入れていた最中に起こったコロナ禍の行動制限などの影響で、主に業務用の牛乳や乳製品の需要が激減しました。生乳が余る事態に、国は増産から一転して生乳廃棄や乳牛を減らす対応をしてきました。また、飼料や電力の価格高騰、副収入源である子牛価格の大暴落なども重なり、国内の酪農全体が危機的な状態です。私たち生活クラブの自前の牛乳工場も例外ではなく、存続の危機が訪れています。そこで緊急の対策として、4月から牛乳の価格に2円を上乗せして酪農家の生産対策に活用する「牛乳応援基金」をスタートします。
牛が搾乳できるまでには、子牛から育てて3年ほどかかります。牛は毎日乳を出し、都合良く急に止めたり増やしたりできないことは言うまでもありません。酪農を守れなければ、チーズ・アイス・生クリームなど生乳を原料とする食材も国産原料で生産できなくなります。
豆腐 生産者と組合員がともに作り出した「地域開発消費材」
2023年、私たち北東京生活クラブと丸和食品の豆腐をビジョンフードと同等に位置づけ、大切に利用を進めていきます。組合員が30年前に消泡剤を使わない豆腐を作って欲しいと豆腐屋を探し、訪ね歩き「採算性から引き受けられない」と断られる中で、「やりましょう」と言ってくれたのは唯一、丸和食品だけでした。国産大豆と海水由来のにがりを使った、未来に残していきたい私たちの豆腐です。
その他のビジョンフードとして、青果物・食肉があります。「予約・あっぱれはればれ野菜おまかせ4点セット」は関東近郊の生産者からおまかせで4種類の野菜が届きます。生活クラブで取り組む牛肉・豚肉・鶏肉は、生産者・育て方・飼料の中身まで全てが明らかな食肉です。
P4 まちをつくる エッコロたすけあい制度