六ヶ所再処理工場の審査書案についてパブリックコメントを提出しました
原子力規制委員会より、六ヶ所再処理工場が新規制基準に適合していると認める「審査書案」に対して、パブリックコメントの募集がありました。
生活クラブ連合会が参加する「六ヶ所再処理工場に反対し放射能汚染を阻止するネットワーク」の設立趣旨に沿って、生活クラブ・東京として六ヶ所再処理工場の稼働に反対する意見を提出しました。
【意見概要】
1)日常的に放射性物資を放出し、健康被害を生じるリスクを高める
2)化学事故、臨界事故によって壊滅的な被害が生じる
3)莫大な費用負担を強いることになるため、包括的で丁寧な議論を尽くすべき
4)再処理による核のゴミは、不要な廃棄物であり生み出す必要はない
5)余剰プルトニウム問題及び核燃サイクルは破たんしたことを受け入れ撤退すべき
6)東京電力福島第一原発事故を経験し、持続可能な社会を構築すべき
以下の論点は、今回は含めていません。
・地震・津波・火山のリスク
・ガラス固化の技術者不足
・使用済み核燃料問題
・使用済みMOX燃料問題
・日本原燃㈱に経理的基礎がなく事実上の経営破綻
生活クラブ連合会が参加する「六ヶ所再処理工場に反対し放射能汚染を阻止するネットワーク」の設立趣旨に沿って、生活クラブ・東京として六ヶ所再処理工場の稼働に反対する意見を提出しました。
【意見概要】
1)日常的に放射性物資を放出し、健康被害を生じるリスクを高める
2)化学事故、臨界事故によって壊滅的な被害が生じる
3)莫大な費用負担を強いることになるため、包括的で丁寧な議論を尽くすべき
4)再処理による核のゴミは、不要な廃棄物であり生み出す必要はない
5)余剰プルトニウム問題及び核燃サイクルは破たんしたことを受け入れ撤退すべき
6)東京電力福島第一原発事故を経験し、持続可能な社会を構築すべき
以下の論点は、今回は含めていません。
・地震・津波・火山のリスク
・ガラス固化の技術者不足
・使用済み核燃料問題
・使用済みMOX燃料問題
・日本原燃㈱に経理的基礎がなく事実上の経営破綻
以下、意見全文
日本原燃株式会社(六ケ所再処理工場)の審査書案および原子炉等規制法への適合判断には、以下の理由から反対します。
1)日常的に放射性物資を放出し、健康被害を生じるリスクを高める
「六ヶ所再処理工場」は本格稼動時、民生用では世界最大規模となる年間800トンもの使用済み核燃料を処理し、その過程で大気中や海中に大量の放射能を放出します。放射能は工場敷地内の排気塔から空に、沖合3km地点までひかれた放水管から海に放出されます。また大気中には、クリプトン85(半減期10.76年) 、トリチウム(半減期12年)、炭素14(半減期5730年) 、ヨウ素129(半減期1570万年)、ヨウ素131(半減期8日) などの放射能が、海中には、トリチウム 、ヨウ素129、ヨウ素131など、多種類の放射能を一挙に放出します。
これは「原子力発電所が1年間で排出する量」に匹敵する膨大な放射能をたった1日で放出し、それを本格稼動の予定年数とされる40年もの間放出し続けることになります。放出された放射能は消えることなく空と海の両方にひろがり、東北地方はもとより東日本全域が、放射能汚染の直接的な脅威と恐怖にさらされます。放射能はプランクトンや魚、植物等によって生体濃縮され、人間が食べ物から摂取した際には数万倍から数100万倍の濃度になると予想され、実際に再処理工場が稼動したイギリスやフランスでも放射能の海洋汚染が大きな問題になりました。環境はもとより健康被害を生じるリスクを高める再処理工場を稼働すべきではありません。
2)化学事故、臨界事故によって壊滅的な被害が生じる
再処理によって「高レベル放射性廃棄物」が生み出されることで、事故が発生した場合の被害は壊滅的なものになります。故高木仁三郎氏は、著書『下北半島六ヶ所村核燃料サイクル施設批判』のなかで、高レベル放射性廃液を含む貯蔵タンクが破壊され、内蔵放射能の1%が外部に放出されるケースを想定しました。雨などの気象条件にもよりますが、被ばく1mSv圏は東京・横浜を超え遠く名古屋あたりまで達すると、影響評価を行ないました。
万が一でも大事故が起こった際には、これと同等の被ばくを伴うのは必然であり、永遠に日本の土地の多くとその上に生きる生命を失うことになります。地震、津波、火山爆発、さらには航空機や軍用機の墜落など、設備の安全性をどんなに高めようとも、想定以上の事故が起こりうることは否定できない以上、壊滅的な被害を生じるリスクを冒すべきではありません。
3)莫大な費用負担を強いることになるため、包括的で丁寧な議論を尽くすべき
核燃料サイクル政策は、六ヶ所再処理工場の総事業費が13.9兆円、同じ六ヶ所村で建設されているMOX燃料工場分も含めれば16兆円を優に超えます。政府はさらに第二再処理工場についても建設することとしており、この分の費用も含めれば、総額では30兆円を超える巨額を投じる計画となっています。この費用は電気料金として電力消費者から徴収され、2369年まで続くことになっています。こうした費用はすべて私たちの電気代で賄われることになるのですが、広く周知されているとは到底思えません。これまで国策として議論を進めてきたことを反省し、本来あるべき姿として、多くのステークホルダーを集めた包括的で丁寧な議論を尽くすべきです。
4)再処理による核のごみは、不要な廃棄物であり生み出す必要はない
高レベルの使用済み燃料はガラス固化体にすれば小さくなりますが、それと同時に膨大な低レベルの放射性廃棄物が発生します。その量はフランスのラ・アーグ再処理工場では元の使用済み燃料に比べて約15倍、日本の東海再処理工場では約40倍となっています。六ヶ所再処理工場でも、事業申請書から試算すると約7倍の放射性廃棄物の発生が見込まれています。また廃棄物とは見なされない空や海への日常的な放射能の垂れ流しもあります。さらに操業後は、施設全体が放射性廃棄物となってしまいます。これらを含めると再処理工場は、元の使用済み燃料に比べて約200倍もの廃棄物を生み出すという試算もあります。これらはすべて、再処理を行なわなければ発生しない廃棄物であり、これ以上不要な放射性廃棄物を生み出す必要はありません。
5)余剰プルトニウム問題および核燃サイクルは破たんしたことを受け入れ撤退すべき
日本政府は2018年、「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方」を決定しました。その中で、プルサーマルの実施に必要な量だけ再処理することで、プルトニウム保有量を減少させる方針を示しました(2018年末時点で46.3トンを国内外に保有)。しかし、その頼みの綱のプルサーマル計画についても、当初2010年に16~18基で実施するとしていた見込みを大幅に下回っています。東京電力福島第一原発事故後に再稼働した原発でプルサーマルを行なっているのは4基のみ、プルトニウム消費量も2トン程度であり、余剰プルトニウムの問題は解決の見通しがないことは明らかです。
さらには、MOX燃料コストはウラン燃料の10倍以上という試算もあります。もはや再処理に経済的な意義が存在しないのは明らかです。国は、核燃サイクルが破たんしたことを受け入れ撤退するべきです。
6)東京電力福島第一原発事故を経験し、持続可能な社会を構築すべき
放射能汚染は、自然環境とあらゆる生物に深刻な打撃を与えます。東京電力福島第一原発事故を経験し、福島原発周辺の11万という人々の生活基盤が根こそぎ奪われ、さらに多くの人々が被曝の恐怖に日々晒されながら暮らしてきました。野菜、原乳、魚などの食品からも放射性物質が検出され、東北をはじめ広範囲の多くの生産者が風評被害と実被害に苦しみ続けています。
「六ヶ所再処理工場」の脅威と恐怖は、現地の人びとだけの問題ではなく、全国の、さらに地球規模での問題です。原発や核燃サイクルを追求するのではなく、豊かな農畜水産物の恵みを享受し続けられる持続可能な社会を構築すべきであり、それを侵害する「六ヶ所再処理工場」の稼働という選択には強く反対します。
以上
原子力規制委員会 宛て
日本原燃株式会社(六ケ所再処理工場)における再処理の事業の変更許可申請書に関する審査書(案)に係る書面による意見提出
日本原燃株式会社(六ケ所再処理工場)における再処理の事業の変更許可申請書に関する審査書(案)に係る書面による意見提出
東京都世田谷区宮坂3-13-13
生活クラブ生活協同組合・東京
理事長 増田和美
生活クラブ生活協同組合・東京
理事長 増田和美
日本原燃株式会社(六ケ所再処理工場)の審査書案および原子炉等規制法への適合判断には、以下の理由から反対します。
1)日常的に放射性物資を放出し、健康被害を生じるリスクを高める
「六ヶ所再処理工場」は本格稼動時、民生用では世界最大規模となる年間800トンもの使用済み核燃料を処理し、その過程で大気中や海中に大量の放射能を放出します。放射能は工場敷地内の排気塔から空に、沖合3km地点までひかれた放水管から海に放出されます。また大気中には、クリプトン85(半減期10.76年) 、トリチウム(半減期12年)、炭素14(半減期5730年) 、ヨウ素129(半減期1570万年)、ヨウ素131(半減期8日) などの放射能が、海中には、トリチウム 、ヨウ素129、ヨウ素131など、多種類の放射能を一挙に放出します。
これは「原子力発電所が1年間で排出する量」に匹敵する膨大な放射能をたった1日で放出し、それを本格稼動の予定年数とされる40年もの間放出し続けることになります。放出された放射能は消えることなく空と海の両方にひろがり、東北地方はもとより東日本全域が、放射能汚染の直接的な脅威と恐怖にさらされます。放射能はプランクトンや魚、植物等によって生体濃縮され、人間が食べ物から摂取した際には数万倍から数100万倍の濃度になると予想され、実際に再処理工場が稼動したイギリスやフランスでも放射能の海洋汚染が大きな問題になりました。環境はもとより健康被害を生じるリスクを高める再処理工場を稼働すべきではありません。
2)化学事故、臨界事故によって壊滅的な被害が生じる
再処理によって「高レベル放射性廃棄物」が生み出されることで、事故が発生した場合の被害は壊滅的なものになります。故高木仁三郎氏は、著書『下北半島六ヶ所村核燃料サイクル施設批判』のなかで、高レベル放射性廃液を含む貯蔵タンクが破壊され、内蔵放射能の1%が外部に放出されるケースを想定しました。雨などの気象条件にもよりますが、被ばく1mSv圏は東京・横浜を超え遠く名古屋あたりまで達すると、影響評価を行ないました。
万が一でも大事故が起こった際には、これと同等の被ばくを伴うのは必然であり、永遠に日本の土地の多くとその上に生きる生命を失うことになります。地震、津波、火山爆発、さらには航空機や軍用機の墜落など、設備の安全性をどんなに高めようとも、想定以上の事故が起こりうることは否定できない以上、壊滅的な被害を生じるリスクを冒すべきではありません。
3)莫大な費用負担を強いることになるため、包括的で丁寧な議論を尽くすべき
核燃料サイクル政策は、六ヶ所再処理工場の総事業費が13.9兆円、同じ六ヶ所村で建設されているMOX燃料工場分も含めれば16兆円を優に超えます。政府はさらに第二再処理工場についても建設することとしており、この分の費用も含めれば、総額では30兆円を超える巨額を投じる計画となっています。この費用は電気料金として電力消費者から徴収され、2369年まで続くことになっています。こうした費用はすべて私たちの電気代で賄われることになるのですが、広く周知されているとは到底思えません。これまで国策として議論を進めてきたことを反省し、本来あるべき姿として、多くのステークホルダーを集めた包括的で丁寧な議論を尽くすべきです。
4)再処理による核のごみは、不要な廃棄物であり生み出す必要はない
高レベルの使用済み燃料はガラス固化体にすれば小さくなりますが、それと同時に膨大な低レベルの放射性廃棄物が発生します。その量はフランスのラ・アーグ再処理工場では元の使用済み燃料に比べて約15倍、日本の東海再処理工場では約40倍となっています。六ヶ所再処理工場でも、事業申請書から試算すると約7倍の放射性廃棄物の発生が見込まれています。また廃棄物とは見なされない空や海への日常的な放射能の垂れ流しもあります。さらに操業後は、施設全体が放射性廃棄物となってしまいます。これらを含めると再処理工場は、元の使用済み燃料に比べて約200倍もの廃棄物を生み出すという試算もあります。これらはすべて、再処理を行なわなければ発生しない廃棄物であり、これ以上不要な放射性廃棄物を生み出す必要はありません。
5)余剰プルトニウム問題および核燃サイクルは破たんしたことを受け入れ撤退すべき
日本政府は2018年、「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方」を決定しました。その中で、プルサーマルの実施に必要な量だけ再処理することで、プルトニウム保有量を減少させる方針を示しました(2018年末時点で46.3トンを国内外に保有)。しかし、その頼みの綱のプルサーマル計画についても、当初2010年に16~18基で実施するとしていた見込みを大幅に下回っています。東京電力福島第一原発事故後に再稼働した原発でプルサーマルを行なっているのは4基のみ、プルトニウム消費量も2トン程度であり、余剰プルトニウムの問題は解決の見通しがないことは明らかです。
さらには、MOX燃料コストはウラン燃料の10倍以上という試算もあります。もはや再処理に経済的な意義が存在しないのは明らかです。国は、核燃サイクルが破たんしたことを受け入れ撤退するべきです。
6)東京電力福島第一原発事故を経験し、持続可能な社会を構築すべき
放射能汚染は、自然環境とあらゆる生物に深刻な打撃を与えます。東京電力福島第一原発事故を経験し、福島原発周辺の11万という人々の生活基盤が根こそぎ奪われ、さらに多くの人々が被曝の恐怖に日々晒されながら暮らしてきました。野菜、原乳、魚などの食品からも放射性物質が検出され、東北をはじめ広範囲の多くの生産者が風評被害と実被害に苦しみ続けています。
「六ヶ所再処理工場」の脅威と恐怖は、現地の人びとだけの問題ではなく、全国の、さらに地球規模での問題です。原発や核燃サイクルを追求するのではなく、豊かな農畜水産物の恵みを享受し続けられる持続可能な社会を構築すべきであり、それを侵害する「六ヶ所再処理工場」の稼働という選択には強く反対します。
以上
【2020年6月25日掲載】