世田谷区カーボンニュートラル連携協定締結フォーラム「市民電力と電気の地産地消」を開催しました
➡太陽光パネルと蓄電池の共同購入のしくみ「生活クラブ東京・まちなか市民ソーラー」(詳細はこちら)
生活クラブ東京が創エネルギーについて具体的に方針を掲げたのは15年前の第5次長期計画(2010~2014年度)でした。チョルノービリ原発事故以来、反原発を掲げ活動していましたが「反対するだけでよいのか。原発に代わる、私たちができることに取り組もう」という議論になり、創エネルギーと自然エネルギーの共同購入のしくみづくりが方針に盛り込まれたのです。現在は生活クラブ風車「夢風」「千颯」(秋田県)、庄内・遊佐太陽光発電所(山形県)、さがみこファーム(神奈川県)などの再生可能エネルギー発電所と生活クラブでんきが誕生しました。
今回、創エネルギーの取組みをさらに一歩前進させ、この東京で地産地消のエネルギーを作ることに挑戦します。生活クラブは食べ物の生産から廃棄まで責任を持つことを掲げて消費材開発を進めてきました。エネルギーに対しても、同じように生産から廃棄まで責任を持つ消費者でありたいと思っています。そのためのしくみ作りには多くの賛同者が必要であり、エネルギーの地産地消を進めるパートナーとして世田谷区と手を携えることを大変嬉しく思います。
▲会場の様子
基調講演 金子勝 慶應義塾大学名誉教授
「消費者によるエネルギー転換を――電気メーターの向こう側から社会を変える」
フォーラムは第51回衆議院議員総選挙の前日でもあり、冒頭、金子先生はインターネットやSNS上のフェイク情報に警鐘を鳴らしました。フィルターバブルやエコーチェンバーなどのしくみにより偏った情報に曝され続ける傾向にあるとしたうえで、再エネや原発についても誤った情報が出回っていると指摘しました。
基調講演では主に経済の視点から現在の日本のエネルギー政策の課題を指摘しました。世界中で太陽光パネルや再エネに関するデジタル技術が日々進化しているが、日本は危機管理投資、エネルギー資源安全保障投資という名目で防衛産業や原発推進、土木などの産業に投資をしている。大企業や原発産業、経済界の意向が色濃く反映されている現在の政策で日本の再エネやデジタル技術の進歩は一層遅れるだろうと危機感を示しました。実際に20年近く前まで世界第二位だった太陽光パネル製造のシェアは現在大きく落ち込んでいます。
そんな状況の中、生活クラブ東京・まちなか市民ソーラーの取組みは消費者によるエネルギー転換の可能性を秘めていると語ります。大手電力会社や政府の再エネへの厳しい政策(託送料金の廃炉費用負担、再エネ発電所の出力抑制や接続拒否など)が進められる中、電気メーターの向こう側=市民の家庭にはまだその手は及ばないと指摘しました。太陽光パネルも蓄電池も家電と同じ扱いなので、設置を止めることも、発電を禁止することもできない、と。
一人ひとりが家庭の電気に再エネを選択し、太陽光パネルを乗せた一軒一軒の家が発電所となり売買電を行えば、地域のエネルギーを自給することに繋がります。講演中に魯迅の「絶望が虚妄であるのは、まさに希望と同じ」という言葉を引用し、消費者によるエネルギー転換の可能性への希望を示しました。
Q、太陽光パネルの廃棄が心配
A、現在のメーカー保証で大体25-30年は使用できる。2040年に80~100万tが廃棄されるという予測があるが、一方、自動車は年間500万tが廃棄されている。太陽光パネルは廃棄にあたって重量比で95%がリサイクルできるとされていることを考えれば、廃棄量は多くないと言える。またリサイクル工場も増えており生活クラブでも見学に行けるところがある。(飯田哲也さんより)。中古太陽光パネルの需要もある。建て替えや転居で処分されるものを買い取り、費用を抑えてパネルを設置している例は多い(金子さんより)
Q、太陽光パネルの設置を検討したが、屋根への負担などが心配
A、屋根の種類に応じた取り付け方法があるので、必ずしも穴をあけたりするわけではない。工事に際して施主としっかり相談することが非常に重要。パネル1枚の重量は現在20~30kg程度だが技術は日々進歩しており、より軽量化されたパネルも登場している。(飯田さんより)
Q、太陽光パネルの製造に電力がかかるときいた
A、製造には電気を使用するが、再エネを推進すればその電気も環境負荷をかけないものにできる。原発や他の産業も同様に電気を使用しているので、事実やデータに基づく情報かを見極めることが大事。(飯田さんより)
Q、製造や設置の心配
A、さまざまな業者がいるので、信頼できる事業者と提携することが必要。生活クラブは消費材の生産者のもとへ出向き、交流して消費材を開発していった。食の生産者にそうであったように、直接足を運び信頼できるパートナーを探すことは非常に重要です。(飯田さんより)
パネルディスカッション
登壇者それぞれの視点から、再生可能エネルギーの現状や日本の課題をお話いただき、世田谷区における取組を拠点に都内各地域へと広がる未来を展望する会となりました。
飯田哲也氏(環境エネルギー政策研究所所長)文明史的なエネルギー大転換と落伍する日本、市民によるエネルギー自立への挑戦
冒頭、世界の太陽光発電の拡大状況(太陽光発電は2,948GW(+698GW/年)、原子力は375GW(-2.8GW/年))や、太陽光発電量、蓄電池設置量、EV販売台数などの数々のデータを基にし、世界の動きに日本がいかに取り残されているかを示しました。そしてその最大の原因として、旧大手電力10社による支配構造の不正と非効率が日本のエネルギー転換を阻んでいると指摘しました。
その後、先進事例として南オーストラリア州の太陽光と蓄電池の取組みが紹介されました。南オーストラリア州では多くの住宅が太陽光パネルと蓄電池を設置し、そこで州全体の電力をまかなっているとのことです。現在は更に、余剰電力を他州へ売電し収益が生まれているといいます。
東京電力をはじめ大手電力会社の収入の9割は家庭の電気料金である事を指摘し、市民が電力を生産すること、そしてまちなか市民ソーラーの取組みが大手電力会社の支配構造を破る一つの手段になるのではないかと結びました。
生活クラブでんきのこれまでの取組みとまちなか市民ソーラーの意義
でんきも消費材の共同購入と同じであるとしたうえで、エネルギーを市民の手に取り戻すことが重要だと指摘しました。自分たちが使うエネルギーは国や企業ではなく市民が決めることが重要であり、そのためにも生活クラブでんきは電源構成を毎月公開していると言います。日本に電源構成の表示義務はありませんが、市民がエネルギーを選択するために必要な情報と考えるためです。(ドイツでは表示義務があります)。
また地域に資する発電所をめざし、基金活用など発電所を建設する地域に還元できる取組みを進めていると語ります。遊佐町の生産者にアイガモロボットを提供、酒田市への移住・定住型拠点建設の資金拠出、耕作放棄地の農地としての復活、社会福祉法人と連携した労働参加などが事例として紹介されました。最後に、まちなか市民ソーラーのしくみでは組合員の一軒一軒が生活クラブエナジーの分散型の発電所となり、送配電会社と切り離したエネルギーの自治につながると結びました。
保坂展人氏(世田谷区長)区民と創る世田谷の脱炭素社会について~地域社会の変革に向けて~
冒頭、福島第一原発事故をきっかけに世田谷区長に立候補した頃、脱原発は国の仕事で、自治体でできることはないのではとよく言われた、と振り返りました。しかし今、エネルギー転換は自治体からでしか変わらないのではないかと感じでいます。
世田谷区では住宅が多い特性を分析し、家庭からのCO2排出削減と太陽光パネル設置を推奨してきました。加えて、一括集中型の供給に対する災害リスクを考慮し、分散型や地域間連携を模索してきたといいます。事例として青森県弘前市、新潟県十日町市、津南町との再エネ発電所との連携事例が紹介されました。今、世田谷の「ヤネルギー」に立ちかえり、世田谷区の屋根を改めて資源として、電気の地産地消に取り組む時期が来ていると結びました。
加瀬奈穂子氏(23区南生活クラブ生活協同組合理事長)「まちなか市民ソーラー」と持続可能な地域社会
先の3名のお話の内容をふまえ、それが消費者である自分たちや組合員にどうつながってくるかをお話されました。
まちなか市民ソーラーの取組みは消費材と全く同じ「共同購入」であると言います。電気もどこで、誰が、どのように作ったものかをわかって使う、食べ物を選ぶようにエネルギーも選びたいと語りました。さらに、太陽光パネル設置や電力会社選択の際に信頼できる事業者の選定は非常に重要で、生活クラブへの信頼が再エネ導入のハードルを下げることになると指摘し、一人ひとりの生活者が電気メーターのこちら側から社会を変える主役であると結びました。
カーボンニュートラル連携協定フォーラム締結式
その後、既にまちなか市民ソーラーに申し込みをした23区南の坂部理事よりコメントがありました。「何が正解ということがはっきりわからない社会ではあるが、よりよいものを選びたいと思って今まで活動している。原発よりも太陽光で作られた電気を選択したいという思いと、生活クラブが進める取組みなら、という思いで参加しました。ぜひ多くの方に続いてほしいと思っている」と参加者に呼びかけました。
最後に守本香副理事長が「社会から見ると今日集まった私たちはほんの一握りかもしれません。逆風を感じることもあると思います。そんな時は今日この場に集まっている人がいることを思い出して下さい。生活クラブでつながっている私たちは、遠慮なくいろいろな話ができるということを忘れず、今日この場にいない人にはぜひ話をして伝えてください。一人ひとりが一歩ずつ、歩みを進めていきましょう」と結び、フォーラムを終了しました。