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【報告】パレスチナ産オリーブオイル学習会を開催しました

開催日:2024年06月04日

昨年10月以降、ガザ地区を実効支配するハマスによる攻撃を発端にした、イスラエルによるパレスチナ ガザ地区での猛烈な攻撃が続いています。ヨルダン川西岸地区でもパレスチナ人に対するイスラエル軍や入植者の暴力により、多数の犠牲者が出ています。
この状況を知るとともに、パレスチナ産オリーブオイルについて学ぼうと、6月4日、(株)オルター・トレード・ジャパンの小林さん・黒岩さんを講師に環境政策委員主催で学習会を開催しました。
バランゴンバナナやエコシュリンプの提携生産者である(株)オルター・トレード・ジャパンでは、民衆交易の一環として、2004年からパレスチナ産オリーブオイルの取組みをしています。オリーブオイルに込められた思いと、取組みの意義について伺いました。

▼パレスチナ問題の歴史的経緯

(株)オルター・トレード・ジャパンの小林さんからは、パレスチナが置かれてきた歴史的な背景を伺いました。
世界に離散し、ヨーロッパで差別を受けていたユダヤ人の中で「土地なき民に民なき土地を」をスローガンに、ユダヤ人国家の設立を目指す「シオニズム」が起こりました。その後、第二次世界大戦では、ナチスによるホロコーストで600万人以上が亡くなり、25万人以上のユダヤ人が難民化する中、1947年国連が「パレスチナ分割決議」を採択。もともとパレスチナ人が多く暮らすパレスチナの土地を、国連決議は半分以上をユダヤ人に割譲するものでした。パレスチナ人から大きな抵抗が起こり、第一次中東戦争が勃発。世界最大のパレスチナ難民を生むことになります。
小林さんは「植民地支配を行っていたヨーロッパ諸国は、そもそもほかの土地への入植に抵抗がなかった。現在のパレスチナの問題は、ユダヤ人差別と植民地主義の産物である」と語ります。

▼イスラエル占領下のパレスチナの状況

その後も中東戦争が続き、イスラエルは国連が定めた境界線を乗り越え、パレスチナの土地を占領していきます。国連安保理が撤退を求めても応じませんでした。
イスラエル占領下のパレスチナ自治区はどのような状況なのか。2つの地区に隔てられているパレスチナの状況を伺いました。

【ガザ地区―2007年からあった人道危機】

イスラエルの侵攻を受けて1964年パレスチナ解放機構(PLO、最大派閥はファタハ)が設立され、1987年にはインティファーダ(石の蜂起)が始まりました。その時、イスラーム抵抗運動(ハマス)が誕生します。パレスチナの中では対話路線のファタハと強硬路線のハマスがある中、2006年には評議会選挙によってハマスが勝利し、ガザ地区を実効支配するようになります。
イスラエルはその結果に対する「集団懲罰」として、2007年にガザ地区を完全封鎖しました。
封鎖による燃料不足により停電が常態化、下水施設もないため海が汚染されました。ガザ地区内の農地は非常に狭く、人口の80%が食料支援に依存しています。支援品は生鮮品が乏しく、カロリーが高いものが多いため、糖尿病罹患率も高くなっています。

【ヨルダン川西岸地区―分離壁が阻む人々の暮らし】

オリーブの木々が多く植えられており、(株)オルター・トレード・ジャパンで扱うオリーブオイルの生産者がいるエリアです。
パレスチナ自治区内であるにも関わらず、行政権・警察権がイスラエルに握られているエリアCが面積の60%を占め、パレスチナの自治は虫食い状態になっています。オスロ合意では5年間パレスチナの暫定自治を認めるとしましたが、実際には、ヨルダン川西岸地区の中にイスラエル人の入植地が拡大されています。「イスラエル人を守るため」という口実で地域内に分離壁が建設され、パレスチナ人は自由な移動も制限され、生活や仕事などあらゆる面に被害を被っています。

▼パレスチナ農業開発センター(UAWC)の取組み

イスラエル占領政策下で、困難な生活を強いられる農民を支援するため、UAWCは1986年に設立され、土地開発や農業研修、水資源開発などのサポート、オリーブ生産者の支援を行っています。
パレスチナでは、使用されていないとみなされた土地はイスラエルに接収されてしまうため、農業や植樹など土地を守る活動が大切になります。農業をつづけることで先祖代々の土地を守れるよう、農民たちの支援を行っています。

また、今回のガザ地区への大規模な攻撃を受け、緊急支援活動を進めています。生活クラブでも緊急支援カンパに協力しました。詳細はこちら。
ガザ地区では、家を離れざるを得ない人が200万人。差し迫った飢餓状況にある人は全人口。その中で、UAWCは「ガザの飢餓を止めろ」キャンペーンを通じて、食料を供給しています。ガザ地区内で作られた野菜の配布や、あたたかい食事の提供などを行っています。水や衣類、毛布、薪などを配布しました。
イスラエルは、ガザ外部からの搬入を制限することで「飢餓」を武器として使用しています。UAWC代表のフアッドさんは「計画的な民族浄化である」と激しく批判しています。

▼パレスチナのオリーブオイルについて

黒岩さんからは、パレスチナ産オリーブオイルについて伺いました。パレスチナの農地54%にはオリーブが植えられており、パレスチナはオリーブ原産国のひとつです。9万ヘクタールの土地に1000万本のオリーブがあり、毎年新たに1万本植えられています。
オリーブは10月に収穫期を迎え、収穫されたオリーブの実は近所の搾油所で搾油されます。
去年は、オリーブの収穫時期に戦争状況に突入してしまいました。イスラエルによるパレスチナ農民への暴行なども起き、収穫中に命を落とした生産者もいました。

ヨルダン川西岸地区では、分離壁がつくられると、移動にイスラエルの許可が必要になり、自分の農地にも自由に行き来ができなくなってしまいます。畑が攻撃の対象にもなりやすく、せっかく実をつけたオリーブを盗まれたり、火をつけられたり、木を抜かれたりするなどの妨害が入ります。これは、パレスチナ人が農業を行う意欲を奪う意図もあります。

▼パレスチナ産オリーブオイルに込められた思い

オリーブオイルを取り組む意義について、UAWCより、下記のコメントが寄せられています。
【UAWC代表 フアッド・アブサイフさん】
オリーブ生産者はイスラエル占領下で貧しくされた小農民で、入植者の暴力によって常に危険にさらされている特殊な状況下でオリーブを生産している。民衆交易は農民がオリーブ生産を続け、尊厳を保ち続けるために非常な重要な手段である。

オリーブの生産を続けることは、ひとの尊厳を守るための取組みであり、占領に対する抵抗のシンボルになります。小林さんからは「パレスチナの人々は国際社会から見捨てられたように感じています。オリーブオイルを通じてつながることで、パレスチナの人々に心を寄せて、オリーブオイルを待っている人がたくさんいるのだと伝えていきたい」と語ります。

パレスチナの農民たちが命がけで作られたオリーブオイルには、暴力への抗議と不戦の意思が込められているのだと、学ぶ機会になりました。

\生活クラブ東京でパレスチナ産オリーブオイルを取り組みます/

パレスチナの人々が、今後もオリーブの生産を続けられるよう、生活クラブ東京では、平和活動の一環として、12月にUAWCのオリーブオイルの取組みを予定しています。取組み時は配送・デポーであらためてお知らせしますので、ぜひご利用ください。
 
【2024年8月2日掲載】

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