生協の食材宅配 生活クラブ東京|サステイナブルなひと、生活クラブ

生協の食材宅配【生活クラブ東京】
国産、無添加、減農薬、こだわりの安心食材を宅配します。

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生産者との信頼関係でひろげる、持続可能な野菜の産地づくり

 

 生活クラブでは生産者と組合員の安心と安全、環境の保全を追究するため、化学合成農薬と化学肥料を削減した青果物(アースメイド野菜) に取り組んでいます。2016年11月に農法を選んで利用できるしくみをつくり、2020年4月には安定的な生産と供給をめざして「予約・あっぱれはればれ野菜おまかせ4点セット」の取組みを開始しました。現在では首都圏の8つの生活クラブ*で1万セットの利用にむけて活動しています。

 「予約セット」の生産者である沃土会(よくどかい)の丸山さんとの対談を通して生産者の思いを知り、私たちが望む農産物を食べ続けるためにできることを考えます。
*東京・神奈川・福祉クラブ・埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬の8つの生活クラブで取組みをしています。


写真右)丸山 幸生さん(有限会社 沃土会 生産者代表)
写真左)加瀬 和美さん(生活クラブ東京 副理事長)

 

豊かな土が支える「旬」を届ける野菜作り


加瀬 「予約・あっぱれ はればれ 野菜おまかせ4点セット」が始まり、畑にできた野菜を余すことなく食べられるしくみができました。「予約セット」の生産者である沃土会が野菜作りで大事にしていることを教えてください。
丸山 沃土会では、名前の通り、土作りを大事にしています。なたね油の生産者の米澤製油(株)の油かすや(株)生活クラブたまごの鶏糞を主体に、バランスを取りながら、その土地の風土に合った微生物や菌等で発酵させた、有機質肥料を使っています。うま味が出た良質な肥料を使って野菜を作り上げることが「沃土会」の基本です。できた野菜をおいしく食べていただくことが一番の目的であり、私たちの喜びです。評価されると生産者はもっともっと嬉しくなって、頑張れています。
加瀬 沃土会の生産者は29人と伺いましたが、全員が「あっぱれ育ち」と「はればれ育ち」の農法で野菜を作っているのですか?
丸山 「あっぱれ育ち」「はればれ育ち」の基準で自分たちは作っていこうと、確約書をみんなで書いて生産に取り組んでいます。
加瀬 すごいですね。面積は増えてきているのですか?
丸山 おかげさまで若い生産者、後継者や新規就農者が世代交代と共に入ってきています。「あっぱれ育ち」として評価され、安定して出荷できるので、若い生産者が無農薬栽培への挑戦を続けられています。
加瀬 無農薬で家庭菜園をしていると、野菜が穴だらけになることが当たり前にあります。「あっぱれ育ち」や「はればれ育ち」の青果物は本当に立派で、さすがプロだと思います。土作りが大切ですね。
丸山
 そうですね。土作りは1年2年ではなく、30年40年もかけています。
加瀬 以前、(有)丸エビ倶楽部にお邪魔したときに、「1㎝の土を作るのに百年かかる。それが原発の事故で、一瞬にしてダメにされた」と言っていました。空気、水、土を汚染して、それを除去できない状況を作ったことを腹立たしく思います。
近年は気候変動の影響もあり、「あっぱれ育ち」「はればれ育ち」の農法で作り続けるのは大変ではないですか。
丸山 元になるのは、食べてくれる人がいるという安心感です。それがなければ、若い生産者は作りたがらないです。従来であれば、農薬も化成肥料もいっぱい使って、規模を拡大して、どんどん売りたいわけですよ。でも、そうすると野菜が安くなって、捨てるものも増える。無理して作っても採算に合わず、自分の畑を壊してしまう。自分の作れる力量の中で、消費者に食べてもらえる分を丁寧に作るということが環境にも優しいですし、持続可能な農業ができるとつくづく感じています。

▲「予約・あっぱれはればれ野菜おまかせ4点セット」生産者
加瀬 今年6月には雹害があったと伺いました。
丸山 6月2日に、ソフトボール大の雹が降りました。ハウスは穴だらけ、露地栽培の野菜は葉がなくなり、幹だけしか残りませんでした。次の日も雹の道ができるくらい降りました。その影響で葉物は植え替えになったり、トウモロコシは全滅したりしました。幸いナスとピーマンは幹が残りました。11月まで収穫予定だったので残しておいたところ、2カ月後には収穫できるほどに復活しました。こういった想定外の被害が毎年のように起きています。昔は豪雨のような夕立も、恵みの雨としてありがたかったのですが、最近はゲリラ豪雨です。バケツをひっくり返したような雨量で30分間降られると、土から野菜から流されてしまいます。
加瀬 線状降水帯ですね。
丸山 そうなると私どもは全然太刀打ちできない。恵みの雨どころか、被害がひどくなります。今年は6月20日頃に梅雨が明けたような状況が続き、早く猛暑が来ました。6月下旬から35度を超え、7月に出荷予定だった野菜が1カ月早く育ってしまいました。消費者が「7月に入ったからトウモロコシの季節だわ」と思っても、現場では6月下旬に出てしまっている。気候変動で旬を届けることが大変になっています。
加瀬 旬の考え方って、本当に難しいですよね。私の小さい頃は、トウモロコシは真夏の食べ物でした。今は8月になるとあまり出回りませんね。
丸山 旬は「走り、盛り、なごり」と3つに分けられます。今は旬を「走り」の物ととらえられています。タケノコも出始めの「走り」に食べて、「盛り」の一番おいしい、いっぱい取れる時には飽きてしまう。「なごり」になったら見向きもしない。「予約セット」では旬を届けるために、産地の良い状態の野菜をセットして届ける努力をしています。届いたセットをわくわくして開けて、旬を味わっていただきたいですね。

▲雹(ひょう)被害があった当時の畑

▲約2カ月後にはピーマンの収穫ができるまでに成長しました

「予約」は生産者と組合員の約束


加瀬 東京の8月末の「予約セット」登録人数は4,811人ですが、実際の注文は3,039セットでした。畑には予約分を欠品なく届けるための作付けをしていただいているのに、お休みする人が多く、申し訳なく思っています。
丸山 「あっぱれ育ち」「はればれ育ち」を選んで注文できるしくみができたのは、生産者として嬉しかったです。今までの努力が評価される形で届けられるということですから。どうしたら私たち生産者が安定的に野菜をつくり続け、組合員のみなさんが食べ続けられるのかを検討し、始めたのが「予約」のしくみです。
加瀬 あっぱれ育ち、はればれ育ちの野菜の産地を増やしていこう、と始まった「予約セット」ですが、始まる前とその後で大きく変わったことはありますか?
丸山 予約セットが始まる前と後では、基本的に農法、栽培面積は変えていません。ただ生産者の思いは変わりました。予約セットを欠品にできない責任。それから、同じ人が食べてくれる安心感、信頼感が芽生えてきました。そこが一番大きな点かと思います。今まで「市況が高いと注文がいっぱい来るだろう」とか、「市況が低いと注文が来ないだろう」とか、計画もあってないようなものでしたが、予約セットになって、その心配がなくなりました。特に若い生産者の意気込みを感じています。
加瀬 私たちが予約して食べるこということは意味があることなんですね。生産者の思いが分かると、続けていきたいなと思います。組合員がセットに封入されているカードを出して、生産者に声を届けるしくみがあります。それが励みになることもありますか?
丸山 雹被害の時に、たくさんの声やメッセージカードをいただきました。涙が出るくらい喜ぶ生産者もいました。「作り続けてください」「頑張ってください」「感謝しています」という組合員からのメッセージが、被害にあった生産者ほど心に沁みました。今は秋冬野菜に向けて一生懸命頑張っていますので、期待して待っていただければと思います。

理解して食べることが、未来の産地を作る


加瀬 全国のあちこちから有機JASの野菜を集めて、「はい、無農薬の野菜ですよ」と提供するのではなく、ひとつの産地を面として、その地域に生産者同士のネットワークを作ることを生活クラブは大切にしています。人作りに少しでも予約のしくみが役に立てているのなら、組合員として嬉しく思います。
丸山 人作りですね。
加瀬 作ってくれる人がいなかったら、いくら私たちが「『安心・安全の無農薬』の野菜がほしい」と思っても、手に入りません。また、広い面積の一部だけが生き残ることは長い目で見ると難しいので、面で産地を広げる後押しができることも、組合員として取り組む意義を感じています。
予約セットは沃土会を含めて5つの生産者がいます。横の繋がりはいかがでしょうか?
丸山 今回、沃土会が雹被害にあって、ほかの4つの産地に助けられました。横の連携の大切さ、ありがたさを感じました。このしくみがあってよかったです。全国の生活クラブの農産物生産者による青果の会では、北海道から九州までの全国の産地でリレーをして、何かが起きた時には助け合える会にしてきたいという目標があります。組合員が安心して食べられる野菜を、安定して届けられるしくみを構築していきたいです。
加瀬 2014年に提案された、青果物共同事業の次期構想ですね。予約セットの取組みは、構想実現のための第一歩です。一般市場では生産者同士の関係性はどのようなものなのでしょうか。
丸山 市場ではお互いが競争相手です。どこかの産地でトマトがなくなると、別の産地のトマトの値段が上がります。連携はできないでしょうね。野菜農家は博打みたいなところがあります。
加瀬 生活クラブでは、青果の会で横の連携をめざしているんですね。
丸山 農業の現状を変えていこう理解して食べることが、未来の産地を作るとしています。
加瀬 野菜の生産者から見て、畜産はどういった位置づけなのでしょうか?土作りに㈱生活クラブたまごの鶏糞を使っているというお話もありました。
丸山 農畜連携を基本として農業をやっていかなくては、成り立たなくなっているのが現実です。ウクライナの戦争によって肥料や資材が高騰し、円安により飼料も高騰しています。地域で農畜連携し、堆肥を利用することで畜産公害を出さずに土を肥やすことができます。飼料用米を牛や豚、鶏に与えることで、これからの日本の農業は成り立っていくのかなと考えます。いずれにしても必要なだけの量で循環させていくことが重要です。
加瀬 これからも作り続ける、食べ続けるために、生産者と組合員にできることは何だと思いますか。
丸山 生産者としては、国内自給率の向上、自然農法の取り組み、面積の拡大が重要になります。そのためには組合員と一緒に、食育活動を通したつながりを強めていかなければ難しいのかな、理解し合えないのかなと思っています。目の前にぽんと出されたものと、プロセスを説明されたものでは、同じ無農薬野菜でも味が変わるんですよね。
加瀬 たしかに、自分が住んでいる地域でとれたものや、顔の見えている生産者が作った野菜は美味しく感じます。
丸山 そういった声は生産者としてありがたいですし、やっていてよかったと感じます。一つひとつの声をつなげて、草の根のように広げていけることが予約セットの一番いいところではないかなと思います。数字ありきではなくて、理解し合いながら食べてほしいですね。
加瀬 生産者と組合員が一緒に考えられるのが、生協のあり方ですよね。棚に並んでいる物を選ぶだけでなく、なぜそれなのか?という過程を見られて、話し合えるということを大事にしたいです。目標数を早く達成すると共に、セットに込められた意義を理解する組合員を育てていきたいと思います。
丸山 予約セットはまだまだ課題がたくさんあって、みなさんと考えて作り上げていかないと難しいと感じています。予約セットを普及してくことがサステイナブルにつながっていくと思います。
加瀬 私たちが野菜セットを取り組む背景を伝え続けることで、産地との関係を揺るがないものにしていきたいですね。
2022年11月28日より配布の東京機関紙「ジョイエス2022年12月号」より転載しています。
紙面版「ジョイエス」は、配送の方へはカタログと合わせて配布、デポーの方はデポー店頭で受け取ることができます。紙面版もぜひご覧ください。
【ジョイエス2022年12月号掲載 2022年12月2日WEB掲載】
 
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